「海底ケーブルの科学的利用に関する研究集会」開催報告

 長期に渡る連続的な海洋観測を行う手段として、海底ケーブルを用いる方法が注目されていいる。国内においては以前から地震観測や電磁気観測、海流観測、 海洋生物観測に海底ケーブルシステムが利用されてきた。米国・カナダでは全長3,000km以上の大規模な多目的科学観測用海底ケーブルネットワークであ るNEPTUNEプロジェクトが開始されている。ヨーロッパでも各地で海底ケーブルを利用した長期観測プロジェクト開始されようとしている。
 一方、最近の光海底ケーブル通信技術の飛躍的発展により、1988年に実用化された第一世代の通信用光海底ケーブルはその使命を終え、商用システムとし ての運用を停止しようとしている。これらのケーブルの中には、日本と米本国・カナダを結ぶ太平洋横断光海底ケーブルなどが含まれている。このような通信用 海底ケーブルの科学的利用も重要な課題の一つと考えられる。
 このような状況を踏まえ、本研究集会は、海底ケーブルを利用した海洋観測の科学的な意義とその利用方法を明確にし、その利用を促進するために開催された ものである。研究集会は、2004年11月8日(月)〜9日(火)に渡って行われた。通信用海底ケーブル再利用を中心に、23件の講演とパネルディスカッ ションが行われた。
 講演では技術的な観点からの提案と地球物理学、海洋学、海洋生物学、海洋電磁気学、海洋化学などを含む様々な分野での利用方法が提案された。国外からも 5件の講演があり、アメリカ、カナダ、ヨーロッパで新しい科学観測用ケーブルネットワークの研究プロジェクトが進捗している状況などが紹介された。
 パネルディスカッションでは、各国の現状やプロジェクトの進め方が紹介されたほか、我が国に今後必要な努力として、強力なプロジェクト管理体制が必要で あること、この管理体制の中で、特に技術者と科学者の交流の機会を重視すること、科学計画を十分に議論し、まとめて行くことのできる体制であること、とい う点についてパネラーの議論が集中した。また、「海底ケーブル観測を今後推進するために、研究推進体制を支え、今後の研究拠点となるべき中核的な組織を形 成することが必要」であることが参加者全体で合意された。

 以下は、研究集会の概要と各講演の要旨をまとめたものである。



I. 研究集会の概要

(1)日時: 平成16年11月8日(月) 9:50〜11月9日(火) 15:10
 
(2)場所: 東京大学 地震研究所  第一会議室(5F)
 
(3)主催: 東京大学地震研究所、海洋研究開発機構、IEEE Ocean Engineering Society Japan Chapter

(4)プログラム

(5)参加者数: 

(6)幹事(順不同 敬称略)
金沢敏彦(東大地震研)、歌田久司(東大地震研)、白崎勇一(東大生研)、
三ケ田均(京都大学)、満澤巨彦(JAMSTEC)、浅川賢一(JAMSTEC)



II. 各講演の要旨


パネルディスカッション


第一部 国際的な海底ケーブル利用計画
The Hawaii-2 Observatory
Alan D. Chave (Woods Hole Oceanographic Institution)

ESONET: EUROPEAN SEA FLOOR OBSERVATORY NETWORK
Imants G.  Priede (University of Aberdeen)

Application Technology of Retired Underwater Telecommunication Cables to Scientific Observation
Kenichi Asakawa (JAMSTEC) and Yuichi Shirasaki (University of Tokyo IIS)

Expanding the ATOC/NPAL north Pacific array using the TPC-4 submarine cable.
Bruce M. Howe (University of Washington)


第二部 長期的な海底観測のためのセンサー技術開発
音波を用いた広域海洋計測の現状と将来
蜂屋弘之 (千葉大学工学部)


リアルタイム多目的海底観測システム(VENUS)で挑戦した課題
白崎勇一 (東京大学生産技術研究所)


光MEMS技術を用いた地球計測用センサ
浅沼宏、新妻弘明 (東北大学大学院環境科学研究科)


MEMS技術とその海中計測システムへの応用
藤井輝夫 (東京大学生産技術研究所)


水中音響波から津波の発生を予測する
 松本浩幸 (JAMSTEC)



第三部 長期的な海底観測のための観測技術開発(座長 三ケ田 均(京都大学))
海底ケーブル・ステーションを基地とする海中観測ロボットによる太平洋横断海底
地殻変動観測
 浅田 昭・浦 環(東京大学生産技術研究所)・浅川賢一(JAMSTEC)・
藤田雅之(海上保安庁海洋情報部)


Deployment of Mobile and Real-time Deep Seafloor Observatory at Off Kushiro-Tokachi
Katsuyoshi Kawaguchi, Hiroyuki Matsumoto, Eiichiro Araki (JAMSTEC)


ROV Based Tool Sleds For The Placement of Fiber Optic Cable Between Benthic
Instrument Node
Larry Bird (Montrey Bay Aquarium Research Institute)



第四部    固体地球科学における海洋観測の位置付け(座長 歌田久司(東京大学地震研究所))
海底ケーブルを用いた海洋化学環境の長期連続モニタリングの試み
蒲生俊敬(東京大学海洋研究所)・岡村慶(京都大学化学研究所)


Geoelectric field to probe the dynamics of the Earth’s core
Hisashi Utada and Hisayoshi Shimizu (University of Tokyo ERI)


水中音波による海域火山活動監視の試み
笹原昇(海上保安庁海洋情報部)



第五部 環境に関連し発展する海底観測(座長 満澤巨彦(独立行政法人海洋研究開発機構))
北太平洋亜寒帯海域の物質循環研究の現状
渡辺豊(北海道大学大学院地球環境科学研究科)


海底ケーブルの北太平洋中深層流観測への応用
満澤巨彦(JAMSTEC)


深海生態系の定点観測に求められるもの
山本啓之 (JAMSTEC)


海産哺乳動物研究における海底ケーブルの利用
赤松友成 ((独)水産総合研究センター水産工学研究所)